本・著者の紹介
| 書籍名 | キッチン常夜灯 |
| 著者名 | 長月天音 |
| 出版社 | 角川文庫 |
| 出版年 | 令和5年 |
| ジャンル | 小説 |
| ページ数 | 290 |
著者はご自身も飲食店で働いておられるという長月天音(ながつきあまね)さん。ブログを書くにあたって、初めて著者様のプロフィールを検索しましたが、作中の飲食店業界のリアルな描写はご自身の経験がベースにあるのかと腑に落ちました。
キッチン常夜灯はシリーズとなっており、2025年5月現在、以下の3巻が刊行されています。
- キッチン常夜灯
- キッチン常夜灯 真夜中のクロックムッシュ
- キッチン常夜灯 ほろ酔いのタルトタタン
いずれの作品も、登場人物達の癒しの場となるキッチン常夜灯が中心となり、中堅の洋食チェーン「ファミリーグリルシリウス」で働く女性達が主人公として登場します。
なぜこの本を選んだのか
書店でタイトルを見かけた際に一目ぼれしてしまいました。表紙のデザインも素敵です。
元々、私はお料理ものやお仕事ものが好きで、あらすじの一部分を見ただけで好みの作品であることを確信しました。
街の路地裏で夜から朝にかけてオープンする「キッチン常夜灯」。チェーン系レストラン店長のみもざにとって、昼間の戦闘モードをオフにし、素の自分に戻れる大切な場所だ。
それと、本作がシリーズ化されて並んでいるのも、少なくとも多くの人に支持されているのだなという安心感になって、手に取らせていただきました。
印象に残った一節
ここでシェフの料理を食べ、運命に立ち向かう勇気を身に纏い、これからも奈々子さんは進んでいくのだ。
ネタバレになってしまいますので内容は伏せますが、みもざが常夜灯で出会う常連の1人、奈々子も過酷な運命にさらされている女性です。
美味しい料理に癒されるだけではなく、料理が勇気を与えてくれることもあるのだ。と、僕もシェフの料理を食べたくなってしまいました。
落ち込んだ時や悩みがある時は、食事が喉を通らないこともあります。しかし、無理にでも、食べられるものを口にすることで、悩みに立ち向かう元気をもらうことはあるでしょう。
感想
お手頃価格のファミリー向け洋食チェーン「ファミリーグリル・シリウス」で店長として働く主人公のみもざ。スタッフのシフト調整やお客さんからのクレーム対応に頭を悩ませる日々で毎日心も体も消耗してしまっている。
ふと思う。「店長」という役職はまるで鎧だ。
実は、僕も現在、本業で3店舗の店長を兼任しています。みもざの働き方や、スタッフとの温度差、店長としての重責とストレスには共感できる部分が非常に多く、感情移入しながら読み進めていました。
チェーンの洋食店の店長であるみもざは疲弊して、年上の部下の社員や、アルバイトスタッフ、そして自分の仕事そのものにも諦めの気持ちを抱いています。仕事が終わったら疲れ切っているはずなのに、ストレスから不眠症になってしまい、眠れない夜に仕事のことや生活への不安を夜通し考えてしまうという悪循環に陥ってしまっています。
そんなみもざがキッチン常夜灯と出会うことで考え方を一変させます。
「常夜灯」には独特の時間の流れがある。現実を忘れ、心からリラックスさせてくれる。安眠できない自分のベッドよりも温かくて居心地がいいから、私はつい通ってしまうのだ。
不安を抱えている夜に、安心させてくれる居場所を見つけたみもざ。シェフと接客担当の女性のハイレベルで心配りの効いたサービス。さらに、キッチン常夜灯で出会う常連との交流で、固くなっていた心がほぐれて自分の仕事に対するモチベーションを取り戻すことができます。
僕はもともと、女性が頑張るお仕事もののストーリーが好物。大きな事件や大恋愛があったり、もちろん世界を救ったりするわけではないけれど、等身大の女の子が、当たり前の毎日をちょっとだけ努力して変えようともがいていく。そんな姿に僕自身も元気をもらっています。
読み終えたその週のうちに、続編の2冊を買いに本屋にいきました。日常に大きな不満があるわけではないけど、なんとなくつまらない。そんな感情を抱えている人におすすめできる作品だと思います。
まとめ
夜通し営業しているちょっと風変わりなビストロ、キッチン常夜灯。居心地の良い空間と美味しい料理が主人公たちの心をほどいていきます。
僕は、物語は登場人物に感情移入できるほど没頭できると思っています。等身大のどこにでもいそうな登場人物の、どこにでもありそうな悩みを、少しずつ乗り越えていく姿は、僕の当たり前な毎日も応援してくれているような気がしてしまいます。
お仕事もの、お料理ものが好きな人はもちろん、仕事が忙しくて疲れてしまったという人の息抜きにもおすすめです。