本・著者の紹介
| 書籍名 | 店長がバカすぎて |
| 著者名 | 早見和真 |
| 出版社 | ハルキ文庫 |
| 出版年 | 2021年 |
| ジャンル | 小説 |
| ページ数 | 314 |
本作は、2008年に「ひゃくはち」でデビューされた早見和真さんの作品。甲子園を目指す球児の母親にスポットライトを当てた「アルプス席の母」は、2025年の本屋大賞にノミネートされ、惜しくも大賞は逃したものの、2位に入賞されたので読まれた方も多いのではないでしょうか。
本作、店長がバカすぎては、中堅の書店で働く書店員がリアルに選ばれた作品です。続編として「新!店長がバカすぎて」が刊行されているほか、第三弾となる「さらば!店長がバカすぎて」が2025年9月2日に発売が予定されている人気シリーズとなっています。
僕も、この書評ブログを書くにあたって三作目の発売を知れたので、今回はAmazonではなく、本屋さんに予約しに行こうと思っています。
なぜこの本を選んだのか
僕も本業で店舗の店長をしているので、最初に本屋さんで見かけた時に、インパクトのあるタイトルに目を惹かれましたが、一緒にいた妻に「店長だから気になるの?」と笑われて、その時は買いませんでした。
しかし、それからすぐに、店舗のパートさんとのちょっとした行き違いがあり、「店長とは……」と迷走してオーディブルで視聴。すっかりハマって、書籍版も購入しました。
印象に残った一節
「谷原さんが小柳さんに憧れたように、谷原さんに憧れて書店員になった人間だっているかもしれないじゃないですか」
主人公の谷原京子の後輩にあたるアルバイト、磯田の言葉です。
京子は、吉祥寺の中堅書店「武蔵野書店」の契約社員。7歳年上の先輩社員、小柳真理に、崇拝に近い憧れを抱いています。そもそも、武蔵野書店を職場に選んだのも、学生の頃に小柳さんが書いた本の推薦コメントを読んで、感動したことがきっかけ。
磯田さんはアルバイトですが、少しプライドが高く、小柳に言わせると「迷いの無い」タイプの子。京子はっきりとものを言う磯田に対して苦手意識をもっています。しかし、京子が小柳に憧れたように、過去に京子が書いた本の推薦コメントを読んだ磯田が、コメントをきっかけに自分に憧れを抱いてくれていることを知ります。
この一件をきっかけに、少し腐った気分になっていた京子も、物語が好きで本に救われていた自分の原点を思い出す、冒頭のターニングポイントともなるセリフです。
感想
僕は、お仕事小説好きなので、以前に書評を書いた「キッチン常夜灯」と同様に、本作も大好物でした。
全体的には、店長のおバカなふるまいと、ズレた感覚をツッコむ京子の辛らつな口の悪さが気持ちの良い、コメディタッチの作品です。しかし、読みながら思わず笑ってしまう様な作品でありながら、本屋さんのリアルな働き方、本に対する考え方や姿勢。そして、30歳手前の働く女性の苦脳や心情が痛々しいほどに描かれています。
職場環境に不満はあるし、自分の将来だって不安だ。欲しい本も好きなように買えないし、好きなように買ってしまえばたちまち生活がままならなくなる。頼りになる上司はいないし、何せ店長がバカすぎる。
それでも結局書店で働いているということは、こうして好きな本の話ができる人と、たとえ違う会社であったとしても、思う存分語り合うことができるからだ。
本を買い過ぎた月は、給料日前になると1日あたりに使えるお金が200円~300円ほどになることも。決して、キラキラした女の子のお仕事小説ではありませんが、それでも本が好きという根っこの部分があれば構わないという覚悟を見ることができます。
そんな京子ですが、ある出来事から、いよいよ今の職場が自分には潮時なのではないかと悩みます。弱音を吐く京子に、小料理屋を営みながら、男手ひとつで京子を育てた父親は、こう声をかけます。
「幸いにもお前には帰ってくる家があるんだからよ。もう少し抗えよ。やるだけやって、それでもダメなら帰ってこい。俺が料理を教えてやる。お前の業界と同じように、ここもそんなに甘いもんじゃねぇけどな」
僕にも、今、高校2年生と中学3年生になる娘がいます。京子の父のように、娘がやりたいことに対して、そして、やりたいことを諦めようとしている時に、支えとなってやれる存在にもなりたいと思わされました。
まとめ
店長は本当にバカなのか、それともすべてが狙いで、実は優秀なリーダーなのか。最後の最後まで、読めない店長から目が離せない本作。
僕自身、店舗の店長という立場で仕事をしていて、パートさんとぶつかることもあるけれど、実は僕がバカになれば解決する問題もあるのか……?そうすると、本作の店長はやはり優秀なのか?と惑わされています笑
今回、書評を書くにあたって、再度オーディブルでの視聴中。何度読んでも(聴いても)楽しめる、軽快なテンポは、仕事でくすぶった思いをしたことがある方にもおすすめできますよ!